散策会の報告です

陽ざしは温かくても、気温の低い日々。肌寒さに野草たちは尻込みしているようで、あまり姿を見せてくれていません。

その、まだ静かな知里森舎の森へ、道内から11名のみなさまが集まりました。

 前半はアイヌ語名や、生活や儀式における利用法についての座学です。茎葉が仮小屋の屋根を葺くのにも使われるアキタブキは、大きな葉っぱが鍋や食器替わりになり、花や茎を食べることから、部位それぞれに呼称があります。

大人ばかりの会でしたが、ふきのとうが題材の児童書を朗読しました。動植物のカムイが主人公となるおはなしを読み、自然の中に身を置くと、自分と動植物との距離感がぐっと縮まり、親近感が湧いてきます。

 幸恵も見ていた記念館周辺の登別の「鬱蒼とした森」にはそんなカムイである鳥がきて、地中にたくさんの菌がいて、「景観に優れた森」とは異なります。

 後半は野外へ出て、アキタブキやフクジュソウ、ヨモギなどを観察しました。身近な野草も実は知っているようで詳しく見たことのないものもあります。

ふきのとうはキク科のアキタブキの花茎のことで、茎葉とは地下茎でつながっています。また、雌雄異株(しゆういしゅ)であり、花は雄株と雌株で異なります。更科源蔵/更科光 (1976)は北海道島北部からサハリンにかけてでは茎が肉厚で花期が終わるとすぐに枯れるのは雌で、綿のような花がつき長く伸びるのは雄だと記しています。一方、植物としては花期が終わると雄花は枯れ、少しでも遠くへ種を飛ばそうと花茎を伸ばすのは雌株です。実物を前にアイヌの雌雄観を感じ、雌雄の花の違いについても確かめ合いました。

何がどうやって探したのか、落ち葉の下の土を掘り起こし、植物の鱗茎が食べられた跡がありました。知里森舎の森や、積雪の少ない地域では植物がエゾシカによる食害を受けています。

また、ササの種類の違いに触れ、繁茂する外来種アズマネザサからは生物多様性や地球温暖化といった問題について考えました。

あっという間の2時間でしたが、アンケートに残された“印象に残った内容”には「朗読の神話から目の前の自然とカムイとのつながりが想像でき興味深かった」や「広くない森だが樹種が多い」などがありました。感想には「自然を利用した体験学習は素晴らしかった」や、スタッフが長くなりすぎたと反省する座学に対し「含蓄のある内容で興味深く勉強になった」など、今後の励みになるメッセージもいただきました。心より感謝いたします。

 野草かんさつ会の計画は2月下旬の温かさにつられ立てましたが、姿を見せない野草もあり、当然ながらこちらの意図は汲んでもらえませんでした。温暖化する地球上で共生菌と手を携え、水や光に身をゆだねながらたくましく生きる野草たち。風に揺れる姿は一秒たりとも同じではなく、私たちを飽きさせない自然の魅力といえます。

 知里森舎では2019年度も自然観察会、勉強会、フォーラムなどを予定しています。GW最終日の56日(祝・月)は地名と花々をめぐるフンベ山散策会を行います。詳細は近日中にこちらでもお知らせいたします。お楽しみに!